テレビが放送を開始してからおよそ70年、その間テレビはメディアの中心的な存在として数多くのCMを送り出し、その影響力も非常に大きなものでした。
しかしながら、近年はYouTubeなどの媒体が特に若い世代で人気となり、「以前と比べるとテレビCMの影響力がなくなってきたのでないか?」といった疑念を持つ人も増えてきています。
そこで、この記事ではテレビCMの費用対効果を最大化するための手段やテレビCMのメリットについてご紹介していきます。
テレビCMの費用対効果
テレビCMの効果を測定する方法に「費用対効果」があります。
これは、テレビCMを制作するため、コストとCMを放映したことによる影響力のバランスを比較したもので、最小限のコストで大きな影響力を発揮すれば、それは優れたテレビCMだということができます。
現在、テレビCMにはどのくらいの費用対効果があるのでしょうか。
詳しく見ていきましょう。
テレビCMの価値
デジタルメディアの普及により、テレビ以外のメディアから情報を得ることも多くなってきましたが、実はテレビは数あるメディアの中でも依然として高い人気を保っています。
これは、博報堂DYメディアパートナーズによる「メディア定点調査2024」の結果からもわかります。
調査によると、テレビやスマートフォン、タブレット、パソコンなどを利用してメディア(テレビ・ラジオ・新聞・雑誌)に接触している時間は1日あたり432.7分であり、コロナ時期ほどの伸びではありませんが、依然としてコロナ前以上の数値をキープしています。
参照元:博報堂DYメディアパートナーズ「メディア定点調査2024」時系列分析より|ニュースリリース|博報堂DYメディアパートナーズ
テレビだけに注目してみると、接触時間こそ減少傾向にあるものの、テレビ番組をスマホで視聴するユーザーが増え続けており、スマホでのテレビ番組視聴率は30%を超えました。
それにより、テレビ広告(CM)への接触時間も増えることになります。
テレビ番組をテレビ機器で視聴するケースが減っても、テレビ番組の視聴自体は伸びていることを踏まえるといまだにテレビCMを放映することで自社の商品やサービスの認知度アップ・イメージの向上・売上アップにつなげることができる、価値あるメディアだということがわかるでしょう。
Web広告よりCPMが安価
CMPはCM効果を測定するための指標の一つであり、広告を1,000回見てもらうためにかかる費用のことです。
「広告費÷見られた回数(インプレッション)×1,000」で計算することができるので、たとえば100万円のコストをかけてCMを制作し、そのCMを100万回見てもらえることができた場合のCPMは1,000(円)ということになります。
テレビCMのCPMは放送するエリア(全国放送かローカル放送か)や放送形態(タイムCMかスポットCMか)によって変わってきますが、一般的な相場は300円前後です。
これに対して、主にスマートフォンで閲覧するニュースアプリのCPMは1,300円ほど、大手動画サイトのCPMが800~1,035円なので、テレビのCPMはほかのメディアと比べるとCPMが安いということがわかります。
「テレビCMは成果がない」と勘違いする原因
テレビCMは他メディアのCMに比べてCPMが安いにもかかわらず、成果が出にくいと勘違いされるのはなぜでしょうか。
理由の一つは、大きな成果を出すためには人気タレントや有名なCMプランナーを起用することが必要であり、そのために多額のコストがかかると考えられているからです。
しかし、コストをかければ大きな成果が得られるとは限りません。
もう1つの理由は、テレビではターゲットにピンポイントにメッセージを伝えることが難しいというイメージがあるからです。
しかし、起用するタレントや見せ方を工夫することで十分な成果が得られます。
詳しくは次で説明していきます。
テレビCMで効果を最大化する5つのポイント
では、具体的にテレビCMで満足のいく成果を出すためにはどのようにCMを制作すれば良いのでしょうか。
ここでは、テレビCMの成果を最大限に引き出すためのポイントを5つご紹介します。
テレビの持つ「不特定多数の視聴者に幅広く見てもらえる」という特性を活かして、次に挙げるポイントを意識しながらCMを制作しましょう。
ポイント1.ターゲットを明確化
テレビは若者からシニアまで幅広い層が視聴しているメディアです。
そのため、CMをたくさんの人に見てもらえるチャンスがありますが、その一方で本当に見て欲しいターゲット層に集中して情報を伝えることが難しいメディアでもあります。
たとえば、若い女性向けのサービスを提供している企業のCMをシニア世代が見たとしても売上につながらないように、どんなに有名なタレントを起用したとしてもターゲットになる層にピンポイントで訴求することができなければ、CMの効果は限定的なものとなってしまうでしょう。
テレビCMを作成する際は、ターゲットとなる層を明確にし、ターゲットに向けてわかりやすい企画を用いることや人気の高いタレントを起用するなどの施策が重要です。
ポイント2.テレビCMの種類を理解する
一般的に、テレビCMと呼ばれるものには「タイムCM」と「スポットCM」の2種類があることをご存知でしょうか。
「タイムCM」は特定の番組のスポンサーとなって放送枠を購入し、その番組の放送時間帯において流すことができるCMのことです。
提供表示もタイムCMに含まれます。
基本的にCMの放送時間は30秒以上、契約期間は6ヶ月間(2クール)となります。
番組によって時間帯や視聴者層が異なるため、自社の商品やサービスに合わせてスポンサードする番組を選ぶことである程度ターゲットを絞ることが可能です。
一方、「スポットCM」は番組を指定せずに大まかな時間帯や曜日などを指定してCMを流すことで、幅広い層にアピールすることを目的にしたCMです。
CMの秒数や放送期間を柔軟に指定することができるため、キャンペーン中だけ集中してCMを流したいといった場合に適しています。
ポイント3.テレビCMの配信日時とエリアを精査する
ポイントの1番目でテレビCMの効果を最大にするためには、ターゲットを明確化することが大切だと述べましたが、ターゲットを明確にしたら次はターゲット層の行動パターンの特徴をできるだけ正確に理解することを心がけましょう。
たとえば、自社の商品やサービスを30代・40代の女性に訴求したいのであれば、その人達が「何曜日の何時頃にテレビを見ていることが多いのか」、「どんなジャンルの番組を好んで見ているのか」「ターゲット層から特に人気のあるタレントは誰か」ということをリサーチして、その条件に合致したエリアや時間を選ぶことや起用するタレントを選考するようにします。
できる限りターゲット層について詳しく分析を行い、綿密なイメージを持ちながらCMを制作することが大きな成果へとつながります。
ポイント4.クリエイティブを妥協しない
CMのターゲットとなる人たちの心に深く訴えかけることができるようなクリエイティブなCMを作成することは、CMの成果を最大化するために最も重要なポイントと言えるかもしれません。
ターゲット層の心に刺さるようなキャッチコピーによって購入意欲を刺激することができれば、大きな成果へとつなげることができるでしょう。
また、ターゲット層がいつ、どこで、どのような状況でCMを視聴するのかを想定することもクリエイティブには欠かすことのできない要素です。
特定のタイミングでCMを流すことによって、たとえ同じCMを見たとしても受け取る側の印象は大きく変わってきます。
購買につながる最適なタイミングでクリエイティブを制作することにこだわりましょう。
ポイント5.費用対効果を意識する
テレビは、普及率が高いため不特定多数の視聴者に対して情報を発信することができますが、一方で自社において視聴者数を把握することが難しいため、正しく費用対効果を測定することは困難です。
だからといって、費用対効果を無視してCMを制作・放映するのはNGです。
破格のギャランティーを支払って超人気アイドルを起用したCMを放映することで大きな成果が得られたとしても、それを上回るコストをかけていたのであれば、かえって経営に悪影響を与えてしまうことになってしまいます。
特定のターゲットに向けて適切なタイミングで適切な本数のCMを流すなど、常に費用対効果を頭に入れながらCMを制作することができれば、限られた予算においても最大限の成果があげられるでしょう。
テレビCMの3つのメリット
インターネットが普及したことで、テレビ以外にもスマートフォンやパソコンなどを使ってさまざまな情報を手に入れることができるようになりました。
特に若い世代ではテレビよりもネットを視聴する時間のほうが長いということも珍しくなくなってきましたが、そのような状況の中であえてテレビというメディアでCMを放映するメリットはどこにあるのでしょうか。
メリット1.認知度向上:潜在顧客へのアプローチ
テレビの最大の特徴は、96%以上と言われる普及率の高さです。
近年は、特に若い世代でテレビ離れが深刻になっていると言われていますが、それでも誰もが気軽に情報を手に入れることができるツールとしては、飛び抜けて大きな影響を維持しています。
このような特徴を持つテレビでCMを放映することによって、不特定多数の人々に自社の商品やサービスを知ってもらうことができますし、企業イメージを理解してもらいやすくなります。
また、幅広い層の人々の潜在的な購買意欲を刺激することができるのもテレビCMのメリットです。
メリット2.ブランドイメージの強化:信頼感と価値の訴求
企業の信頼感やブランドイメージというものは、消費者の購買行動に大きな影響を与えます。
もしも同じような性能の商品が同じような値段で販売されていれば、企業イメージの良い信頼できる会社の商品を選びたくなるのは当然の成り行きでしょう。
テレビCMは、Web上のCMと比べると制作するために多額のコストがかかる傾向になりますが、逆に言えばそれだけのコストをかけることができる企業であるということの裏付けにもなります。
また、Web上には怪しい企業のCMも多く見られますが、テレビCMには厳しい審査があることから、「テレビCMで見たことのある会社の製品なら間違いないだろう」という安心感や信頼感を植え付けることができるのもテレビCMのメリットです。
メリット3.購買行動への影響:購買意欲の促進と行動喚起
Web広告はターゲット層に対してダイレクトに訴求することができるため、インターネット検索が購買行動の起点となることも増えてきています。
ただし、その多くはすでに特定の企業やサービスについて明確なイメージを持っている顕在層です。
一方、不特定多数の人々に広く見てもらうことのできるテレビCMは、どの企業の商品を購入しようか迷っている潜在層に働きかけて購買意欲を高めることができます。
新規顧客の開拓という点では、テレビCMの効果はいまだに健在だと言えるでしょう。
また、記述の通りテレビCMは放映のために厳しい審査があるため、ほかのメディアと比べると信頼度が高いメディアです。
安心して購入できるだろうという心理が働くことで、テレビCMをきっかけに興味を持った商品はそのまま購買行動に直結しやすいという傾向もあります。
テレビCMの3つのデメリット
ここまで紹介したように、数多くのメリットがあるテレビCMですが、決して万能なわけではありません。
ほかのメディアとは異なるテレビCMならではのデメリットというものも存在します。
テレビCMを検討されているのであれば、デメリットもしっかりと把握しておくことが大切です。
では、テレビCMにはどのようなデメリットがあるのか、具体的に見ていきましょう。
デメリット1.ターゲティングの精度が低い
この記事でも触れたように、テレビCMは不特定多数に向けて情報を発信することができるのが大きな特徴ですが、それは、裏を返せば特定のターゲットに限定して情報を発信することが難しいと言えます。
もちろん、CMを放送する曜日や時間帯、スポンサードする番組や起用するタレントなどによってある程度まではターゲットを絞り込むことは可能ですが、閲覧記録などの個人情報からターゲットを絞り込んで配信する広告を決定することができるWeb広告のように、精度の高いターゲティングを行うことはできません。
テレビCMを検討されているならば、どの程度ターゲティングの精度が必要なのかをしっかりと判断したうえで出稿を決めるようにしましょう。
デメリット2.制作費用が高い
テレビCMを放映するためにかかるコストは、Web広告や雑誌広告と比べると一般的に高い傾向にあります。
たとえば、YouTubeにデジタル広告を出す際のコストの相場は1ヶ月10万~100万円前後です。
それに対して、テレビCMを出稿する際のコストは100万~400万円が相場となります。
このように、テレビCMのコストが高額となる理由としては、有名なタレントを起用するケースが多いこと、またテレビCMの高い審査基準をクリアするだけのクオリティが必要とされることなどが挙げられます。
しかし、有名タレントを起用することやクオリティの高いCMを放映することは企業イメージのアップや信頼性につながるため、その影響は決して悪いことばかりではありません。
デメリット3.効果測定が難しい
CMの効果を測定する方法として代表的なものにCPMがあります。
これは、CMを1,000回見てもらうために必要なコストを表す数字で、CPMが安ければ費用対効果に優れていることがわかります。
Web広告の場合、どの広告が何回閲覧されたかというデータは簡単に集めることができるので、自社で費用対効果を測定することが可能です。
しかし、テレビCMがどのくらい見られたのか、その数字を自社で測定するのは困難であり、正確な数字を知りたいならば視聴率調査会社からデータを取り寄せる必要があります。
そのためには時間も費用もかかります。
テレビCMは多くの人に影響を与えることができますが、費用対効果を正確に把握したうえでCMを出稿したいと考えている場合に不向きだと言えるでしょう。
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この記事で紹介したように、テレビ離れが深刻化していると言われる現在も、テレビCMは不特定多数に大きな影響を与えることができる有効な手段です。
企業のブランドイメージ強化や信頼感の訴求には特に大きな効果を発揮します。
ただ、一方で「テレビCMはコストがかかる」「ターゲットを絞ってCMを見てもらうことが難しい」「効果測定が正確に把握できない」といった理由からテレビCMを出稿することをためらっている企業も多いことでしょう。
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